Find the Flame (炎を見出せよ)

『Find the Flame』はFFXVIに登場する、クライヴのテーマ曲であり、STORY III-5の「対炎影のイフリート戦」のボステーマでもあります。歌詞は英語ではあるけれど、英語ネイティブの私にでも聞き取りづらかったので、読むまで何を言っているのかさっぱり分からなかったんです(笑)。

My Star』の和訳をつぶやいたら、嬉しいことに、他のドミナント曲の和訳も頼まれたので、まずはこちらからと思って訳してみました。(最初は『Away』からいこうと思ってはいたが、そっちの方は歌詞が多いしややこしいところはいくつかあるので、もう少し後になりそうです)。『Control』、『Do or Die』、『Titan Lost 』、『Heart of Stone』、『Ascension』、『The Riddle』も少しづつ訳していきたいと思うので、出来上がり次第サイトに載せます。

『My Star』の和訳もそうでしたけど、意味だけ訳すのはいいものの、「どっちの訳がしっくりくるか」とか「この言葉だとどんなイメージを思い浮かぶか」とか「感情・ニュアンスが伝わるようにどっちの訳がいいか」とかまではネイティブ感がない私にはやっぱり分かりにくいです。なので、詩的訳をつくるために日本語が母国語である友達に相談してもらっています。いつも思うけど、本当に欠かせないね、「ネイティブ感」(笑)。それで、よけい時間かかっちゃっているけど(細かく微妙なとこまで色々訊いちゃう私ですから)、でもそのおかげ、私一人で作り出せる和訳よりずっといいものになっていると思います、きっと。
(本当にありがとう、祥子!そして acchiさん、ご指名どうもありがとうございます!^^)

一応翻訳に関するサイトなので、参考のために詩的訳の下に超直訳も書いておきましたし、興味のある方には和訳についてメモも書きました(一番下のところにあります)。

作曲:祖堅正慶 | 編曲:祖堅正慶、鈴木克崇 | 歌詞:John Taylor


Dig, dig, dig, dig, deeper
掘れよ、掘れよ、掘れよ、掘れよ、より深く
掘れ、掘れ、掘れ、掘れ、より深く

Dig, dig, dig, dig, deeper
掘れよ、掘れよ、掘れよ、掘れよ、より深く
掘れ、掘れ、掘れ、掘れ、より深く

Delve, delve, delve, delve, deeper
掘り下げよ、掘り下げよ、掘り下げよ、掘り下げよ、より深く
掘り下げろ、掘り下げろ、掘り下げろ、掘り下げろ、より深く

Weep, weep, weep, weep, weeper
嘆けよ、嘆けよ、嘆けよ、嘆けよ、泣く者よ
涕泣せよ、涕泣せよ、涕泣せよ、涕泣せよ、泣く者

Dig, dig, dig, dig, deeper
掘れよ、掘れよ、掘れよ、掘れよ、より深く
掘れ、掘れ、掘れ、掘れ、より深く

Dig, dig, dig, dig, deeper
掘れよ、掘れよ、掘れよ、掘れよ、より深く
掘れ、掘れ、掘れ、掘れ、より深く

Wake, wake, wake, wake, sleeper
目覚めよ、目覚めよ、目覚めよ、目覚めよ、眠る者よ
目覚めろ、目覚めろ、目覚めろ、目覚めろ、眠る者

Reap, reap, reap, reap, reaper
刈れよ、刈れよ、刈れよ、刈れよ、刈取る者よ
刈れ入れろ、刈れ入れろ、刈れ入れろ、刈れ入れろ、刈り取る者

Raise thy lantern, pioneer
汝のランタンを揚げよ、先駆者よ
汝のランタンを揚げよ、先駆者

Shine upon the far frontier
辺境の果てを照らし出せよ
遠いフロンティアを照らせろ

Fingers cracked and body broken
指は砕かれ、身体は壊れ
指はひび割れ、身体は壊れ

Mind adaze yet soul awoken
心はよろめかれど、魂は覚醒させられ
マインドはぼーっとさせられているのに魂は覚醒させられている

Diving into the...mire!
泥沼へと...飛び込んでいく!
泥沼へと.. 飛び込んでいく!

Laid out upon the...pyre!
火葬壇の上に...置かれている!
火葬壇の上に.. 横たえられている!

Never this soul shall...tire!
この魂は決して...尽きぬ!
この魂は決して.. 疲弊せぬ!

Running into the...fire!
炎の中へと...駆け出していく!
火の中へと.. 走り込んでいく!

Your bleary bloodshot eyes open wide in the dawn
爛れて血走るその目が暁に見開く
あなたの霞み血走った目が暁に大きく開く

Let the light in and brighten the shades that sleep inside you
光を取り入れ、あなたの中に眠る陰を照せよ
光を取り入れ、あなたの中に眠る影を明るくしろ

Find the flame, the flame, the flame
炎を見出せよ、炎を、炎を
炎を探せ、炎を、炎を

Find the flame, the flame, the flame
炎を見出せよ、炎を、炎を
炎を探せ、炎を、炎を

Let its light blind you
その光輝に目を眩ませよ
その光であなたを盲目にさせよう

Delve into this dark abyss.
この暗き深淵へと深く突き進めよ
この暗い深淵に掘り下げろ

Fathomless emptiness,
測り知れぬ空虚さ
測り知れない空虚さ

Till the kiss of fire enfolds you!
炎の接吻があなたを包み込むその時まで!
炎の接吻があなたを包み込むまで!


和訳について:

説明が不器用で申し訳ありません。それでも少しは参考になるんじゃないかって、一応書いておきます

  • 3行目と22行目の「delve」は「掘り下げる」以外にも「詮索する」「探究する」「ほじくり返す」「深く研究する」などの意味・訳し方がありますし、昔の使い方だと「(鋤などで)土を掘る」「発掘する」という意味もあります。つまり、3行目では「深く掘り下げて、自分の中に潜めているものを見つけ出して」という意味で使われています。さらに言うと、個人の感覚だと「delve」は「液体などに何かをゆっくり、慎重に浸して探る」というイメージもありますかね(あくまで自分の感覚ですが)。例えば、22行目の「delve into this dark abyss」は「意識的に深淵の闇に身を深く浸れろ・足を踏み入れろ」という意味・イメージで読み取りました。それで、直訳の「掘り下げる」よりも「突き進む」の方が意味的にもイメージ的にもあっていると思って、同じ英単語をそれぞれ違う和訳にしました。
  • 4行目の「weep」は「cry」とまったく同じ意味なんですけど、「cry」よりもっと詩的で、一般的な「cry」と違って、「weep」は「悲しさ・悲痛・後悔・哀悼などで泣く」というニュアンスがあります(安心の余りに、または、嬉しすぎて「weep」するケースもあり得るのかと)。あと、「現代の話し言葉ではない」という印象もありますかね、少なくても私は。なので、最初は「涕泣せよ」にしようと思っていたんですが、友達に相談したらこの日本語は珍しすぎて伝わらないかもって言われました。それなら、普通に「泣けよ」にする選択肢もありましたが、それだと「weep」の雰囲気が伝わらないから、直訳の代わりに「嘆けよ」にしたらどうかなって二人で話し合ったんです。物理的に涙が出ている情景にはならないけれど、「weeper:泣く者」が最後にあるから、雰囲気が出るんじゃないかって、それで「嘆けよ...泣く者よ」にしました。
  • 8行目の「reaper」は、日本人の方もきっとご存知だと思いますけど、英語では「grim reaperこと死神」という意味で使われるケースもあります。ですが、「you reap what you sow (自業自得)」という諺もありますから、ここは「死・殺傷」ではなく「因果」の話をしている可能性だってあります。そしてFFXVIのストーリーを考えると、「対炎影のイフリート戦」はクライヴが自分の過去の過ちや失敗と向き合って「己・真実」を受け入れる場面でもありますから、ここはおそらく後者の方なんじゃないかって思いました。となると「reap」されているのは「魂・命」ではなく、「過去の言動・振る舞いが生み出した結果・報い」です。個人的にそっちの解釈の方がきっとあっていると思って和訳を「刈取る者」にしました。(行全体の律動を考えて「り」は省くことにしました、発音は変わりませんが一応)
  • 9行目の「thy」は「汝」でも「そなた」でもよかったんですが、アルテマがクライヴに対して使う二人称は「汝」なのでそっちにしました。他のところはなぜ「thy」と「thee」じゃなく「your」と「you」になっているかよくわかりません。まあ歌詞ですから(笑)。
  • 11行目の「fingers cracked」は実は英語として少し変です(個人のセンスですけど)。最初に読んだとき、意味・イメージがしっくり来なかったので、これは「労働者・剣客のように、指先の皮膚が硬くなって亀裂が生じる」ということなのかな?って思ったんですが、単に同じ行に「broken」の繰り返しを避けたかっただけなのかも知れません。同じ行の「body broken」もまた、本人の仕業(過労や奮闘などで身体を壊した)と他者の仕業(拷問や戦闘などで身体を壊された)という、二つの解釈があり得ます。なので、ここは「指を砕き、身体を壊し」という風に訳しても問題ないと思います。むしろ、そっちなのかも知れないと思ったんですが、3連目の「よ・よ・れ・れ」エンディングが好ましかったので結局は「指は砕かれ、身体は壊れ」にしました。
  • これもかなり知られていることだと思いますが、12行目の「mind」も、英語の「heart」も日本語に訳すと同じ「心」になりますが、英語では「mind」は頭脳の精神的面で、「heart」は心臓の精神的面です。概して、「mind」は「思考」を担当し、「heart」は「感情」を担当するという風に理解してもいいでしょう。なので「mind adaze」は意味的に「dazed」とあんまり変わらないと思いますし、逆に「heart adaze」というフレーズは噛み合ってなくて存在しません。
  • あと、12行目の二つの動詞(adaze、awoken)は同じ 「a-」活用をしています。この 「a-」は、簡単に言うと「ある状態・アクションの最中」という意味です。例えば「board (a train)」=「(電車に)乗る」>「aboard (a train)」= 「(電車に)乗っている最中」ですが、こんな風に活用できる動詞は限られていて、大半はほぼ使われなくなったからか、少し「昔の言い方」って感じがしますかね。(普通に使われるa-動詞もありますけど:awake, aloud, aboard, aloft などなど)
  • 13行目の「mire」は「泥沼」と違って、「もつれ」「窮地」「苦境」「汚辱」などの意味もありますから、これはもしかするとクライヴが言っていた『それが 数多の人が咎める大罪になるのだとしても 自分の道だと信じているのです (英: “Though every soul in the realm may judge my actions heresy, I am certain my cause is just.”)』、彼のその想いを指しているのかも知れないって思いました(そうでもないかも)。ちなみに、「diving into the mire」はOST disc 1 track 8 の「Into the Mire」 (スティルウィンドの環境テーマ) と同じフレーズです。おそらくはたまたまですけど。
  • 14行目の「pyre」の和訳で一番迷いました。死体、もしくは生贄を火葬壇の上に置いて燃やすのって日本にはない習慣なので(ヴァリスゼアにもないと思っていましたが、私の知識が欠けているか、この歌詞を書いた方ご存知なかったのか...)。でも、FFXVIの歌詞全般は古代ギリシャ文化の引喩が所々ありますから、これもそのひとつなのかも知れません。
  • 15行目の語順は現代のそれではないので、和訳を「尽きない」ではなく「尽きぬ」にしました。(参:[古] Never this soul shall tire > [現] This soul shall never tire.)
  • 17行目の「bleary」は「霞んだ」とか「ぼやけた」でもよかったんですが、この曲は「火」のイメージで溢れているから、「火」へんのある「爛れた」という和訳が好きでした。「暁」という時間帯にも相応しいのではないかと。
  • 18行目の「shades」は「影」を「後悔の念」「埋もれたトラウマ」「過去の罪」などの隠喩として使っていますので、漢字を「陰」の方にしました。あと、「shade」を「亡霊」という意味で使うケースもありますが、「that sleep inside you」というフレーズがその直後に来ているから、ここはきっと幽霊じゃなく精神的なものを指しているんだと思います。
  • 24行目の「kiss」はおそらく、口が触れる「キス」というよりも「何かがそっと触れてくる」と意味で使われているのでしょう。ですが、そんな風に使われるのは大抵、風のそよぎ、にわか雨、そういったジェンテルなエレメントを語るときで、「kiss of fire」は初めて見ました。FFXVIの日本語版を見てると、異世界感を増すためか、外来語は殆ど使っていないことに気づいたので、悩んだあげく和訳を「接吻」にしました。

All source materials belong to the parties to which they are licensed. All translations are our own.

Leave a Comment